人生最悪の日の思い出

今年も10月2日がやってきた。

今日から数えて9年前、平成8年10月2日、それが私のここまでの人生で最低最悪の1日。

結婚生活5ヶ月目の、まだ新婚気分の残っているさなかの出来事だったから、余計にショックが大きかったのかも知れない。

最愛の夫が出勤途中くも膜下出血で倒れ、救急車で病院に搬送された。

会社に連絡をもらった私、タクシーを飛ばして病院へ向かったけど、説明されたのは絶望的な状況ばかりで、命の危険はしばらく続いた。

彼、当時39歳になったばかり、左眼の奥にあった脳動脈瘤が破裂したのだった。

命が助かったとしても、一生寝たきり、良くて半身不随、言葉を話すことも、言葉を理解することも出来ないかもしれないと告げられた。そんな最悪の日。

手術後、薬で脳を眠らせて、消費する酸素を極限まで抑える。これによって呼吸も止まり、1週間ほどは人工呼吸器に繋がれていた。

水頭症で頭に水がたまるので、体内に管を通して水を出すのだけれど、髄膜炎を併発して3度やり直し。

最後は頭に注射器を射して水を抜くなんて、信じられないような事もやったっけ。

結局意識が回復したのは、半年以上たったゴールデンウィーク明けのころだった。

まあ、意識が回復したと言っても、眠ってないって判るという程度なんだけど。

看護婦さんたちが、彼の耳元で大きな声でいろいろと尋ねる。でも反応の悪い彼、聞こえてないの?それとも判らない・・・?

でも何となく確信があったんだ。看護婦さんが立ち去った後、彼の耳元に小声で内緒話してみる。「そんなに大きな声出さなくても、聞こえてるよねぇ。」
そしたら彼は(そうだよねぇ。)って風に頷いて、にっこり笑った。

良かったぁ。ちゃんと言葉理解できてる。久しぶりに見えた希望の微かな光。



あれから9年・・・。彼は今もリハビリを頑張ってる。