『女王の教室』を見て思うこと

混乱していた。

「逆らった人には罰を与えます。」と真矢は言う。

「目上の者には従うことを子供たちに教えたい。」って言う。

なのに、スパイをさせたエリカに向かって、「断ることはできたはずよ。」って?

もう固まるしかない。間違っていると思っても逆らっちゃいけない。

それで素直に言うことを聞いてみれば、今度は「思考停止人間」呼ばわり!?

ジレンマに陥るしかない。


考えていたら、思い出した。間違っている大人を許せなかった子供の頃。

でも、逆らっても、いくら間違っているって言っても、聞いてもらえなかった悔しさ。

子供なりの正義感は砕かれて、敗北感と諦めだけが胸に残った。

正しいと思ったことを言いなさい、やりなさい、っていう大人。

なのに、正しいと思ったことを言った途端、やった途端、怒られ叩きのめされる矛盾。

そうだ、私は、あの時から、大人を尊敬できなくなった。

そんな風には見せないように、でも、心の中で馬鹿にして、軽蔑して、嫌悪していた。

力がある、お金がある、大人なんてただそれだけじゃないか。

正しいことと悪いことの区別も付かない、自分の都合の良いように捻じ曲げて、独りよがり、自分さえ良ければいい、そんな大人を、憎んでいた。

今の子供たちは、もうちょっと違っているかもしれないし、何十年経っても何にも変わってないのかもしれない。


もし、和美のような子供がいなくて、先生に反感を抱きながらも、じっと耐えるような生徒ばかりだったら、この話はもっと混乱した問題を提起したのかも知れない。

由介と馬場ちゃんが1年通して代表委員か。由介はそのうち登校拒否。
ひかるは心を開かないまま、「こんなクラス、最低。」と小ばかにしながら、親にも教師にもクラスメイトにも不信感を抱き続けるんだろう。

真矢は、そのときどう動くんだろう?
逆らう児童はいない。
でも、皆死んだように、言うことを聞くだけで、それこそ思考停止人間の集まりの中で、真矢は標的を選んで児童を虐めるのだろうか。

創作ダンスに出られない馬場ちゃんを助けてくれる友達も現れず。

救いのないクラスだ。そうなったら。

自分で何とかする力がなければ、真矢に服従するしかない。


能力を超えたことを要求されて、努力したとしても、結果を出さなければ認められない。

血のにじむような努力をして、結果が出ればまだ良し。としても、真矢は褒めてもくれないんだろう。

飴とムチっていうけど、真矢にはムチしかない。
(だから女王なのか!? いや、まさか ^^; )



私が真矢のクラスの生徒だったら、どうだったろう?

ひかるのように正しいと思ったことがちゃんと言えるだろうか?

それで、罰を受けたら、きっとグレるな。教室の掃除ぐらいなら、我慢してやる、それ位なら。

でも違うね、それが奉仕活動ではなくて、「罰」だということ。

反省を促すための行為であるということ。やるせないよね。

私は間違ってないっていう気持ちと、もしかしたら、間違っているのかっていう気持ち。

そして言えることは、二度と同じ過ちは繰り返さない。

つまり、一度ですっかり懲りるだろうということ。

私は二度と逆らわなくなる。どんなひどいことが、目の前で行われていても、見て見ぬ振りをするようになるだろう。



いろいろ言ったけど、それでも真矢は素晴らしい教師だと思ってる。

反面教師っていう皮肉な意味ではなくて。

問いに対して答を持っていること。

自分で考えて、自分で行動して、自分で責任を取ろうとしていること。

そして何より、言行一致していること。

児童に自分が出来もしないことを要求したりはしないのが、真矢の素晴らしいところ。

(「勉強しなさい」と言う影で、自分はその何倍も勉強しているとか。)

そういう真矢を知ったから、理不尽な言葉の裏の意味や真矢自身のこと、もっと考えてみたくなったんだから。